
九保すこひです(フリーランスのITコンサルタント、エンジニア)
さてさて、前々回「Vue 3の新しい機能と変更点・全9件」という記事を紹介しましたが、この中でひとつ気になるところがありました。
それは、
Vue 3はTypeScriptをサポートしました
という部分です。
個人的には、JavaScript
をビルドするというのはあまり好きではないのですが、TypeScript
の評判がいいのは日々実感していたので、「食わず嫌い」にならないよう体験してみることにしました。
そこで!
今回はLaravel Mix
でTypeScript
を使う方法をご紹介します。
ぜひ楽しみながらやってみましょう!
「最近マイクロソフトがマジ本気ですよね」
開発環境: Laravel 7.x、TypeScript 3.8.3
目次 [非表示]
準備する
TypeScriptをインストールする
まずパソコンのどこからでもTypeScript
が実行できるようにします。
以下のコマンドを実行してください。
npm install -g typescript
インストールが完了するとtsc
というコマンドが使えるようになっています。
確認のためにバージョン情報を表示してみましょう。
tsc --version
※この記事を書いている時点(2020.3.30)で3.8.3
でした。
TypeScriptの設定をする
続いてLaravel
のフォルダに移動し、以下のコマンドを実行します。
tsc --init
すると、tsconfig.json
というファイルが作成され、この中でTypeScript
の設定ができるようになります。
ちなみに、この中でコンパイル後のJavaScript
バージョンを指定することができます。
初期値はES5
となっていますが、すでにIEのサポートも切れているので今回はアロー関数などが使えるES2015(ES6)
に変更してみましょう。(もちろん、お好みでOKです)
/tsconfig.json
{
"compilerOptions": {
// 省略
"target": "ES2015" //
ここ
// 省略
}
}
Laravel Mix(webpack)の設定をする
最後にwebpack
がTypeScript
を使えるようにしましょう。
/webpack.mix.js
mix.js('resources/js/app.js', 'public/js')
.sass('resources/sass/app.scss', 'public/css')
.ts('resources/ts/app.ts', 'public/js/app.js'); //
ここ
もし、フォルダ内全てのファイルを対象にする場合はこのようになります。
mix.js('resources/js/app.js', 'public/js')
.sass('resources/sass/app.scss', 'public/css')
.ts('resources/ts/**/*', 'public/js/app.js'); //
ここ
では、これで準備は完了です!
次からは実際にTypeScript
を書いてみましょう。
Laravel MixでTypeScriptを使う
シンプルなテスト
では、テストとして次のようなTypeScript
を作ってみます!
/resources/ts/app.ts
export function message(name: string): string {
return `${name} さん、こんにちは。`;
}
そして、作成したTypeScript
コードを読み込みます。
/resources/js/app.js
window.message = require("../ts/app").message; //
追加
では、この状態でビルドしましょう。
npm run dev
すると、次のようにコンパイルされました。
/public/js/app.js
// 省略
/***/ (function(module, exports, __webpack_require__) {
"use strict";
Object.defineProperty(exports, "__esModule", { value: true });
function message(name) {
return `${name} さん、こんにちは。`;
}
exports.message = message;
/***/ }),
では次のようなコードを実行してみましょう。
<html>
<body>
<script src="/js/app.js"></script>
<script>
console.log(message('山田太郎'));
</script>
</body>
</html>
コンソールに「山田太郎 さん、こんにちは。」と表示されました。
うまくいきました
Vueコンポーネントをつくってみる
では、せっかくですのでTypeScript
でVueコンポーネント
もつくってみましょう。
作成するのは、あいさつ文が時間帯で切り替わるシンプルなものです。
/resources/ts/app.ts
import Vue from 'vue'
const MessageComponent = Vue.extend({
props: {
name: {
type: String,
required: true
},
},
methods: {
greeting(): string {
const d: Date = new Date();
const hours: number = d.getHours();
let greeting = '';
if(hours >= 18 || hours <= 3) { // 夜
greeting = 'こんばんは!';
} else if(hours >= 12) { // 昼
greeting = 'こんばんは!';
} else { // 朝
greeting = 'おはようございます!';
}
return greeting;
}
},
computed: {
text(): string {
return `${this.name} さん、${this.greeting()}`;
}
},
template: '<div v-text="text"></div>'
});
export {
MessageComponent
}
そして、呼び出す側はこのように変更してください。
/resources/js/app.js
window.MessageComponent = require('../ts/app.ts').MessageComponent;
では、この状態でビルドします。
npm run dev
ビルドが終わったらビューをつくりましょう。
/resources/views/typescript.blade.php
<html>
<body>
<div id="app">
<message-component name="山田太郎"></message-component>
</div>
<script src="{{ mix('/js/app.js') }}"></script>
<script>
new Vue({
el: '#app',
components: { //
コンポーネントをセット
MessageComponent
},
});
</script>
</body>
</html>
最後に、以下のルートを追加してブラウザで確認します!
/routes/web.php
Route::get('typescript', function(){
return view('typescript');
});
表示はこうなりました。
成功です
もしエラーが出たら・・・
もしコンソールにVue is not a constructor
というエラーが出たら、vue
を読み込んでいる部分に.default
を追加してください。(どうやらエクスポート形式が変更になるようです)
/resources/js/app.js
window.Vue = require('vue').default; //
ここ
おまけ:app.jsのキャッシュを無効にする方法
今回のようにビルドをする場合、たまに問題になるのが「キャッシュ」です。
つまり、ブラウザが過去のソースコードを使いまわしている訳ですが、これではせっかくビルドしても古い動きしか確認できません。
そのため、この問題点を回避する方法をご紹介します。
まず、webpack.mix.js
にversion()
を追加します。
/webpack.mix.js
mix.js('resources/js/app.js', 'public/js')
.sass('resources/sass/app.scss', 'public/css')
.ts('resources/ts/app.ts', 'public/js/app.js')
.version(); //
ここ
そして、ビルドしたapp.js
を読み込む部分でmix()
というヘルパー関数を使います。
<script src="{{ mix('/js/app.js') }}"></script>
こうすることで、ビルドするごとに作成されたランダムなパラメータがURLに追加され、毎回新しいソースコードが読み込まれることになります。
<!--
ビルドするごとにランダムなパラメータが変更になる -->
<script src="/js/app.js?id=d0cab0115e4a4fdcfb8e"></script>
おわりに
ということで、今回はLaravel Mix
でTypeScript
を使う方法をご紹介しました。
TypeScript
は、Javaのように型を厳格に決めることができるので、よりエラーが発生しにくいコードが書けるのが特徴です。
また、純粋なJavaScript
では使えない「インターフェイス」などの機能もあるので、これらを活用することでよりコード量を減らすことができるんじゃないでしょうか。
なお、自動的に実行可能とはいえ、やはりビルドは開発テンポが悪くなったり、保守作業をしようという気持ちが削がれるので、ぜひ今後は純粋なJavaScript
で同じ機能が使えるようになればいいなと考えていました。(もしかすると、ES2016
以降ですでに予定してる)
Edge
もChromium
ベースになりましたし、以前より期待しています
ではでは〜!
「はじめてTypeScript
コードを見たとき、
『Javaじゃん!』とつぶやきました」